祖語と先史時代:現代の言葉が語る、先史時代の過去
- Jam Ham
- 8月17日
- 読了時間: 5分
著:ジャム・ハム
訳:コーラル

語源学者の間ではよく知られていますが、人は他の言語から単語を借りたり、言葉の意味を徐々に変えたり、社会や文化のかたちに合わせて言語を変えていったりするものです。
例えば英語の「beef(牛肉)」、「pork(豚肉)」、「cow(牛)」、「pig(豚)」を見てみましょう。「beef」や「pork」は、それぞれ牛と豚の肉を意味する、料理で使われる言葉で、10世紀以降に古ノルマン語(Old Norman French)から借りられたものです。一方で、イギリスの農民たちは「cow」や「pig」という英語の言葉をそのまま家畜を指すのに使い続けました。これは11世紀のイギリスで、貴族たちがアングロ・ノルマン語(Anglo-Norman French)を話していて、下層階級の人たちは古い英語を話していたという社会構造を反映しています。
言語によって、いろんな文化グループの最近の歴史がちょっと見えてくることもあまります。例えばイタリア語の「pomodoro(トマト)」は 「pomo d’oro(黄金のリンゴ)」から来ていますが、これはイタリアの人たちがに最初に受け取ったトマトが赤じゃなくて黄色だったからということをほのめかしています。
でも、言葉を使って文化の歴史を解き明かすっていうのをもっと突き詰めるのが、歴史言語学者です。今使われてる言葉や、その言葉が他の言語の単語とどう関係してるかを見ていくと、過去の文化や習慣について教えてくれることもあるんです!

祖語と言語の変化
歴史言語学者はよく「祖語(そご)」という、ある言語の祖先を再構築したものを作ります。言語は音の変化によって進化したり分かれたりするので、言語学者は「sound correspondences(音において似ている部分)」を探して、どの言語が同じ祖先から来てるかを調べるんです。そこから音をある程度推測して、祖語の「音の在庫(その言語にある音)」を作り出すことができます。
例を出してみます。「father(父)」という単語を、下の4つの言語で見てみましょう:
英語:father
ラテン語:pater
古代ギリシャ語:πᾰτήρ(patḗr)
サンスクリット語:पितृ(pitŕ)
これらの単語と、他のインド・ヨーロッパ語族の「father(父)」の単語を比べてみると、何かしら関係があるということがわかりますよね。どんな音の変化が起きたのかを考えて、歴史言語学者は「father(父)」はインド・ヨーロッパ祖語(以下 PIE と呼ぶ。先史時代のインド・ヨーロッパ祖族の言葉を再構築した言語)で「ph₂tḗr」だったんじゃないかと推測します。
このように4つの言葉が関係してるとみなされたとき、これらの単語のことを「同根語(どうこんご)」と呼びます。ちなみに「day」(英語)と「día」(スペイン語)みたいに、同根語に見えるけど実は由来が違う「偽」の同根語というのもよく存在します。借用語が入ってきたりするのは祖語も例外ではありません。なので言語学者はこういう再構築にあいまいさがあることをちゃんと注記しておくんですよ。時には単語の起源をたどるのに十分なソースがないときもありますからね。

同根語が教えてくれること
再構築できる単語と考古学的証拠は、歴史言語学者たちが先史時代の人たちの文化的な側面をいろいろと推測できるようにしてくれます。たとえば、PIE(インド・ヨーロッパ祖語)の「*ǵr̥h₂nóm(穀物)」とか「*gʷṓws(牛)」などの単語を見ると、当時の社会は主に農業中心だったんじゃないかと推測しますよね。家畜とか農具、栽培された植物に関する単語があったってことですから。PIE には男性側の親族を表す単語が多くあったり、社会構造を表す言葉のいくつかも見られるので、そのコミュニティはたぶん家父長制で家系も父親側をたどってたんじゃないかということも汲み取れます。
それから、残されてる単語って、その子孫の人たちにとって文化的に大事なことが多いです。マレー・ポリネシア祖語(タガログ語、マレー語、マダガスカル語、ハワイ語などのマレー・ポリネシア語族の祖先にあたる言語)には、「*bulan-bulan(イセゴイ)」、「*tiqaw(ヒメジ)」、「*qutun(アオチビキ)」みたいな、様々な水生生物に関する単語が沢山再構築できます。これは今でもマレー・ポリネシア語話者たちの多くが持っている海洋文化を反映しています。
過去が語る今
言語がどう進化するのか、単語がどうやって他の言語に移っていくのかを理解することで、たくさんの文化的意味合いが見えてきます。祖語の再構築では、記録に残っていない先史時代の人々の文化や社会のあり方が明らかになることもあります。丁寧な分析といろんな方法を使うことで、祖語や言語の進化の研究は、当時の人々が他の文化とどんな関係をもっていたのかも明らかにしてくれます。
言語間の関係性を分析するためにいくつか同じ方法を使うことは、現代の文化的意味合いを見つけるのにも役立つかもしれません。今の私たちにはより多くの社会文化的背景が提供されていますからね。今使っている言葉からも、上で紹介した例みたいに先史時代のことが見えてきます。言語が昔どう変化してきたのかを見ることで、今の言語がどんなふうに社会や文化、そしてその仕組みに合わせて変化しているのかもわかります。
これをどう活かせるの?
専門的な言語研究だけじゃなくて、気軽に言語を学んでいる人でも、これを学習過程で活かすことができます。例えば、言語同士の関係を知ることで、同根語に気づいたり、特定の単語が持つ文化的な意味も理解しやすくなります。あなたがこの知識をどうやって言語学習に取り入れるか、私たちも気になります!ぜひDiscordサーバーやSNSで教えてください!
Jam Hamについて
22歳のフィリピン系アメリカ人で、言語人類学、社会言語学、歴史言語学に興味がある。英語とタガログ語を話し、今はフランス語を勉強中。ハイキングと旅行が好きで、いつか他の国にも行ってみたいと思っている。
コーラルについて
サーフィン、ゲーム、韓国番組が好きな日本人タピオカマニア。アメリカの大学で、文学士号を最優等位で取得・卒業。独学で韓国語を勉強してきた。最近は台湾華語の勉強を始め、いつか台湾を訪れた時に現地の人とスムーズに会話できることを目標に、勉強に励んでいる。
