道路標識からお店の看板まで:言語景観の奥深い世界
- Oatmilk
- 8月17日
- 読了時間: 3分
著:オートミルク
訳:コーラル
ウィキメディア・コモンズより。
都市地理学を勉強している私は、言語と地理をつなぐようなテーマを書きたいと思いました。そこで、街の中や公共の場で言語がどのように存在しているのかについて話すのは面白いんじゃないかと思ったんです。歩いているときも、車を運転しているときも、自転車に乗っているときも、街には言葉があふれています。看板、広告、ポスター、落書きなど、言葉は至るところに書かれていますよね。この現象とその意味を研究するのが「言語景観」と呼ばれる分野で、公共の場でどのように言葉が使われ、それが何を象徴しているのかを探り、理解を深める学問です。
特に、公用語かどうかに関わらず、多言語が使われている環境や、言語をめぐる対立は、その土地の人々や文化、政治状況について多くのことを語り、言語景観の研究が盛んに行われています。例えば、公用語と地域の言葉が異なる、スペインのバスク地方や、カナダのフランス語圏であるケベック州にフォーカスした研究があります。これらの地域には、地域の言葉を守るための法律があり、英語やスペイン語よりも地元の言語が優先されるようになっています。こうした法律により、全ての看板、つまり言語景観のほとんどが少数派の言語で書かれているんです。
ブルターニュ地域圏カンペールにある、ブルトン語とフランス語の両方で書かれた看板。(Wikimedia Commonsより)
言語景観は、ある地域の言語の多様性を示すのにもとても役立ちます。例えば、レストランやお店、宗教施設などでは、その地域で普段使われている言語とはまったく違う言語で書かれていることもありますよね。これが、アメリカの都市のど真ん中で韓国語やスペイン語の看板があるレストランを見つけたり、公式な公用語はヨーロッパの言語なのに、海外領土ではクレオール言語の看板が見られたりするんです。(例えばグアドループやシント・マールテンなど)
アムステルダム中心部の人気アジア食品店(Maangchi's Korean Grocery Shopping Directoryより)
この現象は、単に地域の多様性を示すだけではなく、観光のような外的要因によっても起こります。アムステルダムやパリの中心部など、観光客が多いエリアでは、中国語、スペイン語、ロシア語の看板や広告がよく見かけられます。これは、訪れる外国人観光客の最も多い客層にアピールするために行われています。もうひとつ、みなさんも経験したことあるであろう外的要因といえば、特定の言語の文化的な影響力です。一番身近なところで言うと、英語でしょう。広告、ロゴ、映画のポスターなど、あらゆる場面で目にしますよね。
言語景観は世界中で見られる現象で、その土地やその土地のコミュニティー、他の場所とのつながりについて多くのことを教えてくれます。公共の空間や言語が、私たちの暮らしの中でどんな役割を果たしているのかが見えてくるんです。そして、それは常に変化する「鏡」のようなもので、言語がコミュニティーや社会に与える影響を映し出しているのです。次にあなたの街を歩くときは、目に入った道路標識にも注目してみてください。普段見落としがちなものの中に、意外な発見があるかもしれませんよ。
オートミルクについて
24歳のフランス人クィアで、数年前からオランダに在住。現在は社会科学研究の修士課程に在籍し、バリスタのアルバイトをしながらオランダ語、ブルトン語、トルコ語を勉強中。ゲーム、映画鑑賞、哲学・社会学・SFを読むことが好き。
コーラルについて
サーフィン、ゲーム、韓国番組が好きな日本人タピオカマニア。アメリカの大学で、文学士号を最優等位で取得・卒業。独学で韓国語を勉強してきた。最近は台湾華語の勉強を始め、いつか台湾を訪れた時に現地の人とスムーズに会話できることを目標に、勉強に励んでいる。



